OBITUARY:1. 2.

<死亡記事>1994年4月8日、ジェネレーションX の代弁者とみなされたニルヴァーナのシンガー&ソングライター、カート・コバーンが猟銃自殺した。
27歳という短い人生で彼は大衆の音楽的ヒーロー以上の存在になる。醜いアメリカのロックビジネス界にあって、少し間をおいたところに位置した彼は汚れてもいなければ堕落もしていない。皮肉っぽい彼の怠惰で用心深い理想主義が「文化の落とし穴から這い出して激しい怒りをどっと吐き出す準備はできてるか」とジェネレーションにはっきり語りかけた。死後、彼はロックの受難というくたびれたうわべの飾りによって名誉をけなされる立場に置かれる。
彼の死が魅惑的とは誰も言わない、避けがたいことだったというショックと憂鬱な気持ちだけが最後に残った。というのもニルヴァーナのものすごい曲<Nevermind >がうまくチャートインしたときアンダーグラウンドがオーヴァーグラウンドになり、否定に励んだのと同様にみんなの所有物に成り下がったことにカート・コバーンは気づく。<In Utero >となってるアルバムのタイトルに最初「I Hate Myself and I Want to Die 」を提案したとき彼は冗談半分だった。アルバムのほろ苦い感慨は考えもしないで消費しようとするあまり完全に理解できなかったファンばかりか、彼自身にも向けられていた。
暗い気分のせいではなく、常に彼を苦しめた燃えるような身体の痛みのせいで彼はヘロインに頼った。何をもってしても彼自身の頭の中の悪霊を鎮めることはできない。胃がずきずき痛むと心も痛んだ。
ロックンロールの神話ではロックのヒーローは激しい生への執着のせいで死ぬことになっている。でも、カート・コバーンはもうこれ以上傷つくのに耐えられなくてあっさり自分で決着をつけた。神聖視するのはやめにして彼のベストのときを記憶に留めておこうではないか。人を感動させ、人生を動かす、音楽のすばらしいパワーと潜在能力を確認する意味でも。

▲参考資料:I- D THE ROCK'N'ROLL ISSUE JUNE 1994
●TAMA-16 掲載、FALL 1994