DANIEL LANOIS:

ダニエル・ラノアは、デトロイトやシカゴのラジオ局から流れてくるジョン・リー・フッカーやジミ・ヘン、クリーム、ザ・フーを聴きながらカナダのオンタリオ湖に面した町ハミルトンで育った。
ある日兄弟ふたりで5千ドルかけて原始的なレコーディングスタジオを地下室に作ったことがきっかけで、3年連続のカナダのプロデューサー・オブ・ザ・イヤーを受賞することになる。
スタジオで作ったデモ・テープが才能を見逃さないブライアン・イーノのアンテナに届いたことからイーノ&ラノアのチームが生まれ現在まで続く。82年イーノの<オン・ランド>、84年U2 の<アンフォアゲタブル・ファイアー>、87年同じくU2の <ヨシュア・トリー>、89年ネヴィル・ブラザーズ最高のアルバム<イエロー・ムーン>、ディランの<オー・マーシー>、そしてピーター・ガブリエルの<バーディ>のサントラと、緻密なテクノロジーを駆使しながらも決して無機質にならないプロデューサーそしてエンジニアとしての彼の音の世界を味わうことができる。
<イエロー・ムーン>の録音がきっかけでニューオーリンズを初体験したラノアはすっかり魅了されて、89年に<アカディ>というアルバムを作った。このアルバムではなにより彼が作詞・作曲・歌となんでもこなす"ルネッサンス・マン"なのがよくわかる。ブライアン・イーノの吠えるような声にシンセや笛の音、ロジャー・イーノのキーボード、シリル、アート、アーロン・ネヴィルのサポート演奏があって、ニューオーリンズ、ラノアのスタジオ、イギリスのイーノの自宅、そしてU2 のアダムのベースとラリーのドラムを録音したアイルランドをミックスした文化的融合がダイナミックな魅力になっている。

●ACADIE :DANIEL LANOIS / OPAL ▲TAMA- 7 掲載、1991