YELLOW MOON

ニューオーリンズ特有の黒っぽさ、その強烈な伝統が魅力となっているライヴバンド、ネヴィル・ブラザーズの1989年のアルバム<イエロームーン>はメッセージ色の強いスタジオ・アルバムだ。ブライアン・イーノとのアルバム<ハイブリッド>や、U2 、ピーター・ガブリエルらの音を手がけたことで知られ、89年のアルバム<アカディ>で独特の音の世界を創り上げたダニエル・ラノアのプロデュースがまた素晴らしい。
アルバムは87年にネヴィル・ブラザーズが来日した際「フリーダムファイター、ネルソン・マンデラに捧げる。南アフリカに自由を!」と言って演奏した「マイ・ブラッド」で始まった。イーノのエフェクト処理が美しい、公民権運動を予感して作ったように思えるサム・クックの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」、そしてワシントン大行進など黒人公民権運動へと発展するきっかけになったモンゴメリーのバス・ボイコット事件の勇気ある黒人女性、ローザ・パークス(彼女は白人女性に席を譲れと言うバスの運転手の命令を拒否して逮捕された)の歌は、当時7歳のシリル・ネヴィルがこのニュースを聞いたときかたわらで母親が「ありがとう、ミス・ローズ」と嬉しそうにつぶやいたことにインスパイアーされていた。

▲TAMA- 2 掲載、1990