アメリカのヘロイン常用者に新たな苦難
「お前たちはテロの共犯者だ!」
戦争当事国のアメリカ国民の約三分の二がその国が一体どこにあるのか知らずじまいのアフガニスタンでの戦争のもう一つの局面は現実からかけ離れたことのように思えた。当時タリバンが手っ取り早く現金を工面するのに国際市場でのヘロイン備蓄量のダンピングを行うと伝えられた。ストリート価格が半値に下がったヨーロッパや南西アジア地域とは異なり、じかに得たアフガンの瓦礫と難民の光景からアメリカ人を割愛する地形がこのヘロインのだぶつきからくる直接の影響を鈍らせる。すでに早くから9.11の結果が不正なドラッグ取引全般ではないにしろアメリカのヘロインに響くはずと観測筋は警告した。
アメリカのヘロイン使用の高さは近年急に増大している。連邦麻薬取締局 DEA によれば国内のユーザー見積数は1999年には93年の6万8千人の300%増の20万8千人で押収量は2000年9月途中で押さえた93キロから2000年10月から2001年6月の315キロへと3倍以上に増えていた。
DEA 地元局の特別捜査官ロバート・ギャグネは大爆発というほどのものではないにしろ、「もっと流行する」とあっさり述べる。しかしながら同時期にコカイン押収量がわずかに減少したのはギャグネによれば供給者がより儲けの多い方面に向けドラッグの需要を売り込んでいる徴候とのことだ。
進歩的なドラッグ政策基金、リンデスミスセンターの専務理事イーサン・ネーデルマンはヘロイン依存の高まりで無視できないのが9.11以降この国のほぼ全員が感じた精神的打撃だと言い、使用と供給がより深刻になるのを心配する。ニューヨーク薬物学会でリンデスミス基金は都会の流行病学研究を管理するドクター、デイヴィッド・ヴラウボと共にテロリズムのストレスと経済がいかにドラッグユーザーに影響を及ぼしているか突きとめることに取り組んでいる。
推定90%かそれ以上のヘロインをアフガニスタンから得るヨーロッパと違ってアメリカの供給品は今のところまだコロンビアとメキシコから同様に大量に入る。とはいえ東部海岸線に沿った地点、とりわけニューヨークの占有率は微々たるものしか得られない、97年アフガン地域からのは20%だった。
ヴォイス紙で働く36歳のマンハッタン子のユーザーが最近入手可能なドープの興味をそそる変化を伝えている。これまでの「だいたい明るいベージュかオフホワイトのコロンビア産パウダー」とは違い、その「ダークブラウンで酢のような臭いがする」新種は20年前に使い始めたときよく買っていたイラン産のヘロインを思い出させる。「あの地域のものだとしたら、なんだって急にそいつが出回っているんだろ」と彼は言う。
中央アジアからの供給物がわずかに増えているとはいえタリバンのヘロインがニューヨーク市場に突然流れ込むなんて話はありそうもないことだと専門家は見なす。ドラッグ政策に集中させるジョンジェイ犯罪司法大学の人類学教授リック・カーティスはあの地域のものが殺到するどころか、逆の仮説を共有する。タリバンの備蓄量は枯渇する。空爆急襲するアメリカ軍の奮闘がアフガニスタンのケシ畑を破壊するかその栽培を妨げる。ヨーロッパのヘロイン供給物は次第に減少して価格が上り坂に転じ、穴を埋めるのにコロンビア産が介入する。おまけにその流用のせいでニューヨークの価格は上がる。
価格が上がるとき麻薬の一袋の大きさは同じでも「袋の中身が変わるはず」とカーティスは言う。DEA のギャグネが伝える「10年前純度10%、20%程度だったのに比べ今の押収品は95%のピュア」を証明するヘロインの純度が悪くなる。「有害な化学物や異物を混ぜるとか変な引き下げになる機会がなおさら増える」とマンハッタン子のユーザーは言う。そして貧乏なユーザーには同じハイ状態になるのにもっと買わなくてはならないことから食べ物やシェルター(ねぐら)に費やす分がいっそう少なくなり、吸引するより注射する傾向がなおさらになると擁護者たちは心配する。ニューヨークの救急治療室に運ばれてくる患者のドラッグ記載の約三分の一はヘロインが原因だ。2000年、救急治療室に記載された3万1千885人のうち1万1千28人がヘロインで、一層リスクの高い使用に引き入れるヘロイン供給品の変化はどんな変化も人を煩わせている。
ニュージャージー州 New Brunswick に住む44歳のユーザーによるとハドソン川の向こう側ではすでに価格が高騰している。ニューヨーク地区のセキュリティがきつくなったことから、これまで10ドルの一袋がリスクの高さを理由にディーラーが要求する15ドルで売れていると彼女は言った。
リベラルな政策の擁護者たちは9.11に続く一層の法の執行が最も無防備なユーザーを傷つけることになると心配する。顧客に何を言うにせよ売人はたいてい無傷のままか、当局がテロに集中するとき堂々の自由を見つけさえすると擁護者らは理論づける。それにひきかえストリートのユーザーは反テロでパトロール中の警察官と遭遇する一層の機会で身を危険にさらす。テロリストの攻撃に続く何週間かはNYPD
のドラッグに基づく逮捕が急に途絶えたとはいえ(前年の同期間の件数の17%まで落ちる)9/10〜9/16 の261人から2週間前には933人に増えている。
もうすでに不釣り合いに貧乏でドラッグの罪で収監されてる「黒人の貧乏人」がこの値上がりとプロファイリングや刑罰強化の両方の主たる犠牲者になってしまうと傷害削減連合のユーザーの擁護者、ドナルド・グローヴは言う。
政府の指導者らはドラッグ戦争をテロとの戦いに結びつけて考えている、北部同盟やアメリカ同盟国もまたヘロイン資金をあてにしているという報告にもかかわらずだ。下院議長デニス・ハスタートの反ドラッグ対策委員会の共同司会者、下院議員ロブ・ポートマンは「愛国者はヘロインを使うな」の見出しで取り上げたシンシナティ・ポスト紙の記事にその発言、「アメリカ人がドラッグ常用癖に金を使うことで我々はテロを保護するタリバン政権を支える手助けをしている」が引用された。
政府の混乱に反応して、ワシントンD.C. の進歩的な擁護団体、ドラッグ政策の良識(Common Sense of Drug Policy )が主要なオピニオン誌に「ソフトドラッグ(マリファナ、ハッシッシなど)にはアルコールでのアプローチに類似した規制と制御されたモデルでハードドラッグ(ヘロイン、コカインなど)には医師の処方箋がなければ入手できない薬剤に類似した規制と制御されたモデルで不法ドラッグの収益の流出に歯止めをかけられるのでは?」と求める広告を掲載した。それどころかドラッグ政策の良識の議長ケヴィン・ゼーセはタリバンや他の供給者への資金供給を断ち切る唯一の方法はドラッグ売買から「イリーガル」を取っ払うことだと言う。(アンダーグラウンドの闇の金から目に見える表の金にすればすむこと)
当のホワイトハウスから権限を委任された2001年3月の報告書の著者を含め年間予算12億ドルつぎ込む政府の反ドラッグの骨折りに批判的な人たちはドラッグを元から効果的に絶つための国際市場でのばくち打ちや策略について当局はほとんどわかっていないと言う。ドープ(アヘン・モルヒネなど)の野放しはほとんど擁護しないが、処方箋や他の抑制手段による取締りを擁護する、法的に正当と認める麻薬公認派は現実に必要との要求をなんとか管理することに集中するべきだと言う。ユーザーがヘロインの処方箋と清潔な注射器などの備品を受け取るスイス政府のプログラムはドラッグ関連の犯罪を減らし麻薬常用者の健康を増進するのに役立っている。供給過剰にして濫用が益々高まるであろうアフガン産ヘロインが他のヨーロッパが採用するスイス方式のなかの重大な考慮すべき事柄になっても不思議ないとケヴィン・ゼーセは予言する。「彼らヨーロッパ人は私たちよりずっと実際的で、頭が切れる」
そんな改善策は現行の "法と秩序" のアメリカにはうけそうもない。あるとすれば、悪と戦うブッシュ政権の十字軍に打つタリバンのヘロイン注射がドラッグ・ユーザーの肌に黒ずんだ罪の印を焼きつけるだけだ。「彼らはもうすでに長いこと攻撃に曝されてきている」と擁護者グローヴは言う。「今度はテロの共犯者呼ばわりされている」
▲参考資料:Village Voice November 7-13, 2001
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