ハロージャパニーズ from New York
ELIZABETH N.

私は今自分の仕事以外に「Manchete 」というブラジルのテレビの仕事をフリーランスでやっていてとっても忙しい。
ブラジルの大統領がニューヨークを訪問するんでそれをカヴァーする誰かが必要になって私を雇うことに決めたわけ。それで国連の世界子供サミットを受け持ったの。私のひたむきな仕事ぶりを見せるには絶好のチャンスだったんだけど、プロデューサーとしての経験不足でとても大変だった。

昔からやってるブラジルのミュージシャンのぜひ聞いて欲しいレコードが出ました。 彼の名はトム・ゼー。そのレコードを作ったのは彼の発見者でもあるデイヴィッド・バーンです。
大都市サンパウロで暮らすトム・ゼーは貧しい北東部の出身。彼の家を訪ねたデイヴィッド・バーンに詩人の眼と耳を持つトム・ゼーはメトロポリスについての話を聞かせる。
彼の音楽は場違いなところに美を見つける「ストリートと街の混乱」だった。
単調な街の生活とちっぽけなホームタウン、イララーへの牧歌的絶賛の歌で音楽生活をスタートさせるトム・ゼーは後に諷刺と政治の歌で最も皮肉屋のブラジルのトロピカリズモ運動者のひとりとして知られるようになる。
70年代半ばにはミキサー、床磨き機、タイプライター、調整されたアコースティックギターで音楽を作る実験的方法をとった。
アマゾンのジャングルの奥地では電気なんか使ったこともない人たちが突然テレビを手に入れている。トム・ゼーはそのパラドクスをこんな風に語る。
「俺たちは先祖伝来の文化を愛している。しかし俺たちは無知になった。問題を解決するには文化を喋り文化を語り文化を踊ることだ。俺たちは毎日の出来事から超自然のコンセプトを読むようになり、荒削りの景色の視覚のキーに秘密の知識を重ね合わせ、織られた言語体系に哲学的な楽器を確立する。俺たち北東部の人間は片方の足を貧困に、もう片方の足を文化的豊かさに置く」

トム・ゼーの音楽はごたまぜのアヴァンギャルド。その多くはポップを感じるサンバでも自然やセックス&愛を歌う以上の曲、それは「サンバと大天使」だ。

そうそう言い忘れたけど、私がアシスタントプロデューサーを努めた映画が公開されたのよ。それはブラジル、バイーア地方の川に関するドキュメンタリー。
川は工場からの廃棄物で汚染されていて漁村としてはもう終わりなの。とても素晴らしい映画で91年には日本でも公開されると思うけど。

●エリザベスはブラジル出身のニューヨーカー。ブラジル体験者のミュージシャン、アー ト・リンゼイ関連の音楽プロモートやデイヴィッド・バーンのフィルム「イレ・アイ  エ」などにも参加している。
▲Tom Ze Tom :brazil classics 4 compiled by David Byrne
●TAMA- 4 掲載、1991年