KUWAIT :
1990年8月2日、イラク軍の侵攻であっけなく崩壊したクウェートはきわめて脆い国家だった。実体があるのは2世紀にわたりこの地域に勢力を伸ばしてきたサバーフ家という豪族。それがイギリスの保護国となって国家の装いを得る1961年の独立後には石油経済に助けられ国民所得が世界のトップクラスを誇る豊かな国になる。 しかし富の大半は40%強のクウェート系アラブ人が独占、行政の主要部で働く30万人のパレスチナ人、シリア、ヨルダン、イランからの人に加え、インドや東南アジアからの出稼ぎ労働者がこの国を支えてきた。こうした人々は「二級市民」と見なされあらゆる面で差別され続ける。
クウェートの建国自体がイラクのペルシャ湾への進出を牽制するイギリスの意図に沿ったものだったが、その存在が危機に立つ"小国の時代の終わり"が始まったのは3年前湾岸のタンカー戦争のなかで伝統的な非同盟・中立路線を捨ててタンカーを守るためにアメリカの保護下に入ったとき。アメリカがペルシャ湾に対し強い姿勢を示したときだった。
▲TAMA- 3 掲載、1990