SPERM-RACING :

毎年9月オーストリアのリンツで開催される芸術・科学・テクノロジー・文化の探究「アルス・エレクトロニカ・フェスティヴァル」の今年の驚きは「精子競争」、
町の中央広場に設置したコンピュータ補助精子分析器の巨大な容器で濃度・運動能力・速さ・pH値を測定してランク付けを行う一方で喧嘩は強いか学歴は運転するクルマはといった情報から女性たちがこれはと思う参加者の精子に賭ける。
もちろんこれには西欧諸国でなぜ精子の質が落ちているのか?極右や人種差別主義者の頻繁な主張に対する皮肉が一杯。
筋骨隆々でもスポーツ好きでもいい精子を持つことにはならない。
人種や国籍との相関関係もない。非常にステレオタイプ化されたイメージが存在するというこれには真地面な側面があった。
おまけに参加者は競争している自分の精子の写真がもらえた。
今で言うなら遺伝子工学や生命科学といった常に新しいテクノロジーが文化や社会に影響を与え始めた分野を扱うのがアルスの理念。
発達の課程に干渉することで蝶の羽根模様を創造する、あるいは昨年の蛍光カラーの緑の犬といった芸術の媒体として組織培養を使うプロジェクトでは科学者ならやっていいと言うものをアーティストがやったらどうなのか?という倫理問題を投げかける。
アルスを主導するゲルフリート・シュトッカーは「こうした研究を科学とテクノロジーに限ったら後に続くのは主流の価値観だけだ。異なる方法で創作し異なる価値観を持つアーティストがプロジェクトに携わり主流の価値観に対抗する思想のための自由空間を確保することが非常に重要だ」と述べる。

▲参考資料:WIRED NEWS 8/29, 2000(TAMA- 28 掲載、2000 UP AND DOWN )