NON RECTANGLES:

前衛ストーリーテラーでエレクトロニクスの切れ者が「白鯨」にはまる?
昨年10月ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックで始まったローリー・アンダーソンのSongs & Stories from Moby Dick は寓話レベルだけとはいえテキストの10%をメルヴィルの小説から取る新傾向の作品なのは確かだ。彼女が景色よりカーラジオと留守電から流れるヴォイスを現実から遊離させる電波と光線でパルスにする目に見えない国、テクノ景に余念がないのはもちろん、イメージは電波・送信媒体で運ばれTVで実体化される。
6回も本を読み返して「音楽として聴きだした」彼女はまた愛嬌ある新型楽器、捕鯨用のモリみたいな形をしたデジタル・サンプリングマシーンも紹介するが、彼女の秘密のゴールは小説を売ることにあった。
そのアンダーソンが目下取り組むのが矩形(箱形)に反対するキャンペーン。「誰も彼もが一日中、四角形を見て過ごすから精神が四角形になる。自分のHD に自分の名を付け、まるで自分がHD に隠れてる気になり自分をなくしてしまう」本のページの外観は無理としてもそのイメージを彼女はなんであれ四角ではない、ラインとか階段、球体に映したがった。
彫刻家からスタートするアンダーソンの首尾一貫した仕事は物事のオーラを変えることなくその特性をシフトさせること。だからバイオリンがしゃべり、目がダンスする。次のプロジェクトは彼女ご推薦の本{The Gospel of Germs アメリカンライフにおける男と女と細菌}に影響された細菌についてだ。

▲参考資料:VILLAGE VOICE '99(TAMA- 26 掲載、2000 SPRING )