eXistenZ:

クールにコントロールされた{クラッシュ}に引き続き冷静なテクノスリラーであるデイヴィッド・クローネンバーグの新作{eXistenZ}は弱点があったりマイナーだったりするがそれを補って余りある試みがたくさんあり、急進的なアイディアと忘れられないイメージで一杯なのは確かだ。
映画はありきたりのヴィデオゲーム・コンソールがゲームする人間の神経系に直接つながる有機的テクノロジー「ゲームポット」に置き換えられる近未来を想定する。有名なプログラマー、心底面白がって演じるジェニファー・ジェイソン・リーの新しいゲーム「eXistenZ」の場合、その成果は既存のものに代わるリアリティとしてナヴィゲートされる内なる仮想世界の創造だ。リアリストとして知られるテロリスト派が動かす対ゲーマー戦争の陰謀を解明するのに行き来するうち不安定なゲームの世界と現実世界の区別がつかなくなる。
今回のクローネンバーグのトリックは83年もっと大変な苦労を要した{ヴィデオドローム}でドラッグみたいなTVの魅力に採用したときよりずっと効果的にやってのけている。昔からのファンが今も彼のトレードマークと考える抜群のボディ・ホラーを特殊効果で伝える一連の肉の仕掛けとオリフィス、さらにこれまでの無味乾燥・冷静なセッティングの第一人者を返上するかのように精密な環境は適当に使い込んだ人の温もりを感じさせる。
もし初期の作品ほど斬新さに欠けると感じるなら、それはただ現実世界が彼が創り出す世界に追いついたせいだ。

▲参考資料:i-D May 1999(TAMA- 25 掲載、1999 CHILL )