OPERATION HIDDEN AGENDA :

11年間教職に就く42歳の社会科教師が、サダム・フセインのスペードのエースを筆頭に2人の息子やケミカル・アリなど55人のイラク人をお尋ね者に仕立てた破廉恥なアメリカ国防省のトランプカードの狂気に仕返しをする反戦メッセージのトランプカードを考案した。
キャシー・イーダーのトランプカード「マル秘作戦」の表はアメリカ国旗とドルマークをまとった自由の女神像の絵と一緒にブッシュ大統領、ラムズフェルド国防長官らの写真とそのすぐ下に戦争の合理性を疑う引用文がついている。「イラク戦争の1日」とあるダイヤの6には「1日で11億ドルが使われた」と説明がある。そしてカードの裏にはサダムと握手する若き日のラムズフェルドの写真が使われた。
サンノゼのベラルミン大学予備校で道徳と社会正義を教えるイーダーは、昨年3月にこのプロジェクトを開始して放課後と夜間を作業にあててきた。これがどれだけ高くつくものか、当初から心配だったイーダーは「コンピュータがチェックされる?戸口にラムズフェルドが現れるのでは?CIA ? FBI ? 」といった具合に米国の恐怖全体に巻き込まれた。
「誰かが愛のトランプを発行しなければならなかった。神に後押しされてのことだと決心した。他に選択肢はなかった」
愛国心の高まる最中、イーダーは印刷屋を見つけるのにも苦労した。多くの小売店がそれを販売するのを拒否する。とはいえ、6月に売り出して以来、1組9ドル95セントのトランプはサンタクルーズとバークレーの反戦の砦である本屋のカウンターから景気よく売りさばかれていく。
「テレグラフ・アヴェニューの本屋ではハリー・ポッターの本よりよく売れている」とバークレーのCody's Books のオーナーは言った。「そいつはまさしく破壊分子だ。ある人には不快の原因であるのは確かでも、ここでは心底共鳴するものなんだよ」
お尋ね者のイラク人を見つけやすくするために兵士に渡された裏に迷彩柄のついた国防省のトランプにはマニアがいた。百万組以上のトランプカードがインターネットと小売店を通して売られている。イーダーもまたこのトランプ市場での大量の売買によって刺激される戦争をテーマにしたカードマニアに売っている。そこには全員バース党のベレー帽をかぶる、スーザン・サランドン、ショーン・ペン、フランスの大統領ジャック・シラクといった反戦の有名人や政治家を描いたイタチ(密告者)トランプもあった。
学校当局に彼女の解雇を求める声、呪いの言葉、裏切り者呼ばわりなど、がさつな非難を招いていても、さらに5千組を注文したイーダーは収益の半分を湾岸戦争シンドロームに苦しむ退役軍人やイラクの犠牲者を支援する団体、奮闘する国際的平和団体に寄付するつもりだ。
かたやブッシュ政権のほうは退役軍人への予算をせっせとカットしている。

▲参考資料:CONTRA COSTA TIMES July 21 2003 朝日新聞Feb.14 2003