CLEAR CHANNEL:

数百人規模の戦争支持集会が数十万規模の反戦集会ほど人を惹きつけるとは思えない。でもアメリカの大多数がそれしか見ないメディアが何度も何度も繰り返し流せば熱烈なものに見えてもしかたない。ディキシー・チックスのナタリー・メインズがブッシュ大統領を批判した後の集会は一番目立った。彼女たちのCD やテープ、その他関連品を15トンのトラクターが押し潰すのを見るためにルイジアナに群衆が集まった。ではこれらの戦争支持集会を組織したのは誰か。真相はこうだった。
ディキシーを潰す集会を組織したのはラジオ局KRMD 。この局はディキシーの曲を放送リストから検閲削除したラジオ網の一つで全米の戦争支持のデモのほとんどがこのクリアチャンネルコミュニケーションズ傘下のラジオ局によって組織されていた。1200局以上を傘下に収めるラジオ電波の帝王は、レコード会社とアーティストを搾取するのに力を行使して放送される音楽を没個性化するのに貢献したと批判されるテキサス州サンアントニオにある悪名高き企業。イラク戦争を巡っての政治論争ではどうやら片方を助けるためにその強硬な影響力を行使したようだ。
クリアチャンネルがここまで巨大になったのは96年通信法がメディアの所有に関する多くの規制を撤廃した後のこと。さらに連邦通信委員会(ボスは国務長官パウエルの息子)はクリアチャンネルがテレビの分野にも事業拡大できる規制緩和を検討している。 ことによると見返りは別のところにあるのかもしれない。というのもクリアチャンネルの副会長トム・ヒックスはブッシュがテキサス州知事のときテキサス大学投資管理会社の会長で、理事には会長のローリー・メイズがいた。ヒックスは大学の基金の多くを共和党やブッシュ家と関係が深い会社の管理下に置き、98年大リーグのテキサスレンジャーズをびっくりするような額で買い取ってブッシュを億万長者にしてやった。
私たちが目にしてるのはこういうことだ。ブッシュ政権では「政府と財界が大きな"WE" に融合」してしまった。国内政治のあらゆる面で財界の影響力が支配している。政治家が財界のためにこれほど熱心なら財界だって彼らに有利になるようお返しをするはずだ。たとえば彼らの側に立って草の根の集会を組織するようなことで。

▲参考資料:The New York Times 3/25 2003 Paul Krugman's Channels of Influence