NOMAS :

「性差別と闘う全米男性機構」NOMAS の第17回大会が1992年シカゴのホテルで開かれた。出席者の数は約400人。女性に対する男性の暴力に反対するフェミニズムを支持する男性たちの主張は、「真の男は、泣きもすれば買い物もダンスも掃除もする。女性の主張に耳を傾け、威張らずに、自分にも誤りがあることに気づくと同時にペニスに頭脳があるはずもないことにも気づいている」
NOMAS のルーツは70年代初めに生まれた男性の意識高揚を目的にするグループだ。雇用、離婚、財産分与などで闘う女性の支援が主な活動で、姓や年齢、性的嗜好、宗教、体格などに基づく差別にも反対した。ポルノも女性を冒涜し、男性の側にも妙なコンプレックスを抱かせるとして認めない。NOMAS の理想の男性像はジョン・レノン。中絶容認派の元大統領クリントンを支持するのはもちろん、ヒラリー・クリントンとのパートナーシップを評価した。
彼らが軽蔑するのは、一時マスコミにもてはやされた「森に出て野性に返り、男同士の絆を強めて男らしさを回復する」男性運動だ。NOMAS 側から見れば、それは男の特権や権力を一歩も譲ろうとせずに異性愛しか認めない、「白人男性固有の男らしさ」を守ろうとするものに過ぎない。これに対して男性運動側はNOMAS は精神の探究を忘れ、聖人ぶって政治課題に熱中していると非難する。 NOMAS の目的は社会を変革することであって「内なる戦士」を発見することではない。 現にアメリカ人女性の36%が生涯に一度レイプを体験する危険性があり、夫である男性のふたりに一人が妻を虐待する可能性があった。なのに全米の49州が夫婦間のレイプを認めている事実。多くの企業がセクハラ対策を推進していること、妻が夫に無断で中絶することを認めた最高裁の判決など、時代が彼らに見方する。
カナダの政治学者マイケル・コフマンは、男性の多くが挫折感と不安に怯えていると言った。「男は他人を支配することが男らしいことだと思い込んでいる。でも現実にはほとんどの男が人を支配することなどできない。だから挫折を感じることになる」
男性が支配に夢中にならなければ、世の中から少なくとも愚かな戦争がなくなり、人生はずっと楽になるはずだ。
▲参考資料:NEWSWEEK NOV.19, 1992
●TAMA- 12 掲載、CHILL 1993