TRIP STAR :

1962年発表と同時に若者を魅了したのはもちろん評論家からも絶賛された処女作<カッコーの巣>は体制に逆らう者はロボトミーという暴力によって無能にされる現代アメリカ社会の悪夢を提示した。
アメリカの典型的カレッジボーイだったケン・キージを変えたのはスタンフォード大学が創り出す知的で洗練された芸術家の溜まり場ボヘミアン・クオーターのペリーレイン。ここに住むことで心理学の知識を吸収した彼はLSD の幻覚を体験しアルバイトで勤務した精神病院の夜警を経て<カッコーの巣>に行き着く。ドラッグの使用で2度ほど逮捕されるが2度目はメキシコに逃亡、金がなくなって戻ったところをFBI に逮捕された。
昨年11/10、ケン・キージは肝臓ガンの手術の後、うまくいったにもかかわらず心臓が停止する。66歳。彼の友人たちはアート、著作、パフォーマンス、あのサイケデリック・バスでアメリカ大陸横断をやらかしたメリープランクスターをも凌ぐ彼の生涯の仕事は、とことん他人をもてなすやさしさと、どんなに卑劣な真似をされてもそいつを許すことだと口を揃える。

▲参考資料:www.intrepidtrips.com
●カッコーの巣の上で:富山房1996 トム・ウルフの<クール・クールLSD 交感テスト>:太陽社1971
●TAMA-31 掲載、2002