PHONE & BRACELETS:

電子式の足かせと監視装置のプッシュホン式電話システムを使い、刑務所ではなく自宅で囚人を拘束する。
まさにこの瞬間、1万2千人のアメリカの収監者、判決待ちの犯罪者、仮釈放中の人たちが電話で極度に拘束されていると感じている。現に彼らがキッチンの壁のその監視装置付き電話から150フィート離れると電子仕掛けの信号が静かに作動して法の執行官が玄関のドアをノックしに現れる。
アメリカの刑務所は今やどこも一杯だ。1983年〜88年の間に囚人の数が地元の監獄内で50%増え、連邦刑務所では収監者が収容人数の70%増しに近づきつつあった。主にレーガン・ブッシュのドラッグ戦争のせいで、40州で刑務所に超満員を強いる裁判所の命令が下っていた。法の執行官はこの電子式監視装置を絶賛する。最悪を最小に止める解決策とうなづける実績も上げていた。
珍しいことに、この"電子ホーム・モニタリング"装置の発想はコミックスから拝借したものだった。1979年、ニューメキシコの判事がスパイダーマンの手強い暗黒街の大敵キングピンが電子式手錠でスーパーヒーローをなんなくコントロールするのを見て思いつく。そしてコンピュータ会社にそれに似た装置を作るよう依頼。1985年、その権利を買い取ったBI 社は監視装置界のキングとなり、ビジネスの将来は天文学的な増加をたどる犯罪と共に21世紀には倍増するものと思われる。
それに、仕事に行くのか「ずらかる」のかを見分けられる監視装置のおかげで、通常の仕事に就ける囚人が自分の手錠の代金を支払うのに手を貸すことができるし、子持ちの母親の囚人が家で子供の世話をすることもできた。
囚人いわく、役人が四六時中自分の動きを見張っているかと思うと多少妙な気にはなるが、「監獄にいるよりはずっとまし」

▲TAMA- 4 掲載、1991