▼米伝道師TV発言「チャベス大統領を消せ」▼  
  ベネズエラは法的処置要求
「しんぶん赤旗」25 August 2005

ベネズエラのランヘル副大統領は23日、同国のチャベス大統領を暗殺
すべきだと米キリスト教保守派の伝道師パット・ロバートソン師(75)
が前日の米TVで公言したのを受け、米司法当局に厳正な処置を求めま
した。

ロバートソン師は、先の米大統領選でブッシュ支持のキャンペーンを展
開した人物。自身が会長を務めるTV局の番組で、チャベス大統領がベ
ネズエラを「共産主義やイスラム過激主義の拠点にしようとしている」
「わが国は彼を消し去ることができる」と主張し、「暗殺の方が戦争よ
り安上がりだ」と述べました。

この発言に対し、マコーマック米国務省報道官は「不適切」と批判し、
米政府の立場を反映したものではないと強調しました。

しかし、ランヘル副大統領は、「ロバートソン師の発言によって米国の
反テロ政策が試されている」「反テロの方針を保持する一方で、明白な
テロ発言が米社会の中でなされるのは、途方もない偽善だ」と主張。
「米市民が犯罪的な発言をした以上、米政府が対処すべきだ」と述べ、
米TV放送法が殺人教唆を禁止していることなどを指摘しました。

チャベス大統領暗殺をあおる米TV番組は今回が初めてではありません。
3月にはマイアミで米中央情報局(CIA)元情報部員のインタヴュー
番組が放映され、「必ず、いつのときか暗殺するだろう」などと語らせ
ました。

ベネズエラ政府はかねてから、暗殺をあおる発言を米政府が野放しにし
ているのを非難してきました。

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▼リオ・グループ外相 TV伝道師の懲罰を要求▼La Jomada
27 August 2005

リオ・グループの外相は、チャベス大統領の殺害を求めたTV伝道師パ
ット・ロバートソンについて、アメリカが懲罰の道を開くと信じている
と表明した。

ラテンアメリカとカリブ19カ国の外相は署名した宣言の中で、「我々
は、アメリカ共和党と関係の深い組織の創始者の、選挙で選出された大
統領を殺害せよとの発言に驚いている。」と述べた。

25日アルゼンチンの南バリロッチェで開催された会議では、コロンビ
ア武装勢力の武装解除、米州機構(OEA)の強化、ハイチの選挙への支持
が表明された。
(8月26日アルゼンチン・バリロッチェ発)

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▼米国内の貧困層に安価で石油提供、ベネズエラが計画▼
読売新聞 29 August 2005

カラカス発:反米姿勢を強めるベネズエラのチャベス大統領は28日、
自ら司会を務めるTV・ラジオ番組で、ベネズエラの石油を、米国内の
貧困層に安価で提供する計画を明らかにした。

米国では、宗教右派のTV伝道師パット・ロバートソンによる同大統領
暗殺発言が物議を醸したが、今回の計画は米国内の貧困層に同大統領へ
の理解を広げることが狙いと見られる。

計画によれば、人権団体などと協力し、「国営ベネズエラ石油」の子会
社が、米国内で運営する約1万4000のガソリンスタンドを通じて、
暖房用燃料などとして貧困家庭向けに市場価格よりも約4割安く石油を
提供する。番組にゲスト出演した米国の黒人指導者ジェシー・ジャクソ
ン師は、週内にも同大統領らと計画の詳細について協議する考えを示し
た。

ベネズエラは世界第5位の産油国。米国は最大の輸出先で、米国の石油
輸入量の約15%を占めている。

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▼石油成金 vs. ウゴ・チャベス▼by ホアン・ゴンザレス
NYデイリーニュース 25 August 2005

昨年、世界最大のエネルギー企業であるエクソンモービル社は、歴史上
どの企業も達成したことのない利益をたたき出した。250億ドル(約
2兆7548億円)超。テキサス州アービングに本拠を置く、この巨大
石油企業は今年もその記録を更新する模様。今では同社の1日あたりの
収入は10億ドル(約1102億円)に迫る勢いだ。

そうして、パット・ロバートソンとウゴ・チャベスの登場である。

キリスト教右派の伝道師でブッシュ家の親友であるロバートソン師は、
今週公の場で、ベネズエラ大統領ウゴ・チャベスを殺すか、少なくとも
誘拐するように合衆国政府に呼びかけた。

「膨大な量の石油を支配し、米国を脅かしているこの人物は、われわれ
南部の人間にとって危険な敵だ。」とロバートソンは述べた。クリスチ
ャンとは思えぬ彼の発言は、物議を醸し、本人も謝罪へと追い込まれた
が、それでもロバートソンは「増大する問題について政府の注意を喚起
しただけだ」と主張している。

その「問題」というのはとても単純なことだ。過激なポピュリストで、
ベネズエラ国民の大多数から何度も選ばれているチャベスは、中東以外
の地で最大の石油備蓄を管理している。

ロバートソンにとっても、元石油企業重役のジョージ・W・ブッシュ、
ディック・チェイニー(現副大統領)、コンドリーザ・ライス(現国務
長官)にとっても、あるいは仲間のエクソンモービル、シェブロン、そ
の他の企業重役にとっても、チャベスは有難くない存在なのだ。

石油業界にとって一番の問題は、チャベスがベネズエラの儲けで自国の
特権階級を潤わせるのではなく、ベネズエラの貧困層や隣国の援助のた
めに使っているという事実だ。

昨日、ロバートソンがまだ中途半端な釈明に追われている時に、ジャマ
イカのモンティゴベイに赴いたベネズエラ大統領は、ジャマイカの首相
P・J・パターソンと新たな石油取引で合意を交わしていた。

その合意内容によれば、ベネズエラは毎日2万2000バレルの石油を
1バレル40ドルという破格値でジャマイカに供給する。現在の石油流
通価格の世界標準は1バレル65ドル、これでは安すぎる。ジャマイカ
におけるガソリン価格はすでに1ガロン3ドル50セント以上なので、
チャベスの提案に従えばジャマイカは石油輸入において毎日50万ドル
以上を節約できる。

さらにチャベスは、ジャマイカ国内の製油施設整備費用として6000
万ドルをジャマイカへの対外援助金としてベネズエラ政府予算から拠出
すると発表している。

今回の合意は、今年6月にカリブ海サミットでチャベスが公表したペト
ロカリブと呼ばれる壮大な計画のほんの一部に過ぎない。

そのサミットにおいて、チャベスは同様の合意案をドミニカ共和国のレ
オネル・フェルナンデス大統領とキューバのフィデル・カストロ首相に
提示した。

フェルナンデス大統領はチャベスの提案に飛びついた。ドミニカ共和国
政府は石油価格高騰により破綻寸前だったからだ。昨年、ドミニカ共和
国は石油輸入に12億ドルを費やした。今年、その費用は30億ドルを
超えると見られている。ドミニカ共和国首都サントドミンゴでは、ガソ
リン価格が1ガロン4ドルを超えて急騰している。

パット・ロバートソンはチャベスを悪魔のような危険人物とみなしてい
る。ロバートソンは、「チャベス排除」を合衆国政府に求めた。ホワイ
トハウスでは、ブッシュと側近たちがもう少し控えめな表現を用いてい
るが、どちらの目標も大した違いはない。

だが、リベラルであると同時に大衆向けの政府が半ダースほども誕生し
ている中南米においては、事情はかなり異なっている。

そういった国では、チャベスは石油で奇跡を行う人になっている。他者
を犠牲にして記録的な利益に溺れるエクソンモービルや他の石油成金と
違い、チャベスは富を他者に拡散させようとしている。

まさしく、危険人物なのである。