どの立場で何を言うか、チャベス死去に伴う報道を知るのはおもし
ろい。イギリスのフィナンシャルタイムズ紙は、「同国と周辺地域
には空白が生じるだろうが、彼は長い間惜しまれるだろうか。惜し
むのはロシアの兵器商人とベネズエラの石油開発に400億ドル(約
3兆7600億円)を融資した中国の国営銀行だけだろう。」
「チャベス主義は地元では存続するだろうが、成功モデル、あるい
は目指すべきモデルとして称賛された日々はとっくに過ぎ去ってい
る。」と述べて、「彼の死はこの地域にとってよかったとしかいいよ
うがない」と結ぶ。(3月7日付)
アメリカ人でも最後までチャベス支持を貫いたショーン・ペンは、
「今日、アメリカ人は知ることもなかった友人を失った。世界中の
貧しい人々はチャンピオンを失った」とコメントしている。
憶えているだろか、世界にとってチャベスがチャンピオンになった
瞬間があった。ベネズエラの大地に遺伝子組換え作物を栽培するの
は認めないと宣言したときだ。

以下は過去のデモクラシーナウ!の放送から引用
(放送日:2010年12月23日)

 

◇ WikiLeaks: モンサントの遺伝子組み換え作物を拒む欧州にアメ
リカが報復を検討

ウィキリークスが公表した外交公電によると、フランスがモンサン
ト社の遺伝子組み換えトウモロコシを禁止したのを受け、2007年に
ステイプルトン元駐仏大使が EUへの報復をアメリカ政府に要請し
ていた。ジェフリー・スミス(「偽りの種子―遺伝子組み換え食品をめ
ぐるアメリカの嘘と謀略」の著者)によると、ブッシュ政権時代、フ
ランス大使ばかりかスペイン大使もモンサント社の幹部からヨーロ
ッパの政治状況の説明を受け、一緒にGM普及策を練っていた。
ウィキリークスの公表により、モンサント社の世界戦略とブッシュ
政権の癒着が確認されたわけだが、このような強引な販売戦略によ
ってモンサント社は米国産大豆のほぼ100%、トウモロコシの約
70%を占めたといわれている。
(中略)
2009年、モンサント社は中国の安いジェネリックの除草剤に押
されて売上が落ち込み、従業員削減に追い込まれる。2011年3
月末、モンサント社に対してインドの有機農法を行なう農民と種子
販売業者が集団訴訟を起こした。インドでは高額のGM種子を借金
で買った農民が借金を返せなくなり、1997年から2010年ま
での農民自殺者が22万人に上った。
(中略)
モンサント社はアメリカ政府の後押しを受け、種子に知的財産権を
つけることで在来農法を駆逐し、農民を依存させ、世界の食糧資源
を牛耳ってきた。遺伝子組み換え食品を含まない食品を探すのは至
難とさえ言われている。しかし、いくら種子を製造しても、それを
蒔いて育てる人がいなくては食糧にはならない。遺伝子組み換え作
物は食糧危機対策としても宣伝されたが、農民を食いものにするモ
ンサント社は、逆に食糧生産を根本から弱体化させ、取り返しのつ
かない危機を招いているといえる。種子は生命の源だ。

http://democracynow.jp/video/20101223-3

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◇チャベス、脱遺伝子組み換え農作物宣言

カラカス、2004年4月21日ーーベネズエラのウゴ・チャベス
大統領は西半球において遺伝子組み換え作物に対する最も徹底した
規制を確立。ベネズエラの大地では遺伝子組み換え作物の栽培は禁
止されると発表した。

カラカスの国際的な支援者集会でチャベス大統領は、国の農民や農
業労働者の利益やニーズに反する遺伝子組み換え作物に警告を発し
た。そうしてベネズエラで20万ヘクタールもの遺伝子組み換え大
豆を作付けるモンサントの計画を止めるよう命じた。「モンサント
に栽培を認める代わりに、これらの畑は在来作物キャッサバを栽培
するのに使われるだろう。そして世界中の百姓の運動のために、在
来品種を保存する大規模な種子バンクを創設する」と発表した。
チャベスは、彼の意志決定の基礎となるベネズエラ憲法によって求
められる食料主権とセキュリティの重要性を強調した。

6千万超の百姓や農業労働者を代表する国際的な農民組織、ビア・
カンペシーナ(Via Campesina)はモンサントとの契約について知
った時、チャベス当局の関心を問題に向けさせた。ビア・カンペシ
ーナのラファエル・アレヘリア国際事業局長によると、モンサント
とカーギルの両者は、ベネズエラで遺伝子組み換えの大豆製品を生
産する認可を求めていた。

契約はベネズエラの農政をガイドする食料主権の原則に反したとア
レヘリアは言っている。これはラテンアメリカと世界の百姓や先住
民族にとって非常に重要なことだった。

アレヘリアの考えは合理的だ。社会と環境問題の長い歴史でモンサ
ントは、100万人以上の流産、身体の震え、記憶喪失に結びつく
ベトナム戦争での枯葉剤の生産で早くも国際的に有名になっていた。
最近では、人間の健康上や環境上にあると考えられる遺伝子組み換
え作物と牛の成長ホルモン(rBGH)の副作用で非難された。

モンサントは農薬グリフォセートを製造する。それはコカの葉の生
産と反政府組織への攻撃であるコロンビア計画の一環としてコロン
ビア政府によって使われている。コロンビア政府は権利を有する農
場やPutomayo熱帯雨林のような自然地域を破壊して、在来住民の
コミュニティを含める人間の健康に対して直接的な脅威をもたらし、
何十万エーカーにも空中散布している。

「もし我々が食料主権を達成したければ、モンサントのような多国
籍企業に依存することはできない」とチャベス大統領のアドバイザ
ー、マクシミリアン・アルヴェライスは言っている。「我々は、文
化の伝統と多様性を尊重し、地場生産を強化する必要がある。」

アレヘリアは、遺伝子組み換え農産物の問題にどうやって対処する
か、その方法を熟考する他の国々への激励として、ベネズエラの動
きが役立つことを望んでいる。「アメリカ、ラテンアメリカ、そし
て世界の人々が、遺伝子組み換えから解放されるにはベネズエラの
事例に従う必要がある」と彼は言った。

http://plala.or.jp/Cuba/Chavez040421.htm

 

参考までに:
チャベスは1998年の選挙で「富の公平な分配」を掲げて大統領
に選ばれた。彼を支持した主な層はこれまで政治に無縁の貧困層だ
った。ベネズエラは石油の産出国だが、その利益は一部の人々(既
得権益層)にしか享受されていない。大多数を占める貧困層や先住
民族は経済的に貧困な状態を強いられただけでなく、政治的な無力
感にもさいなまれていた。チャベスの登場はそうした人々が積極的
に政治に参加する道を切り開いた。

チャベスは人々に、「憲法を読みなさい」と何度も繰り返し説いた。
8割以上の圧倒的な国民の支持を背景にチャベスは、憲法改正、土
地改革(政府の遊休地の民間払い下げ)、独立既得権王国だった国
営石油会社経営への影響力行使と、矢継ぎ早に規制概念にとらわれ
ないドラスティックな改革を進めていく。

その一方、アメリカは民主主義援助資金(NED)の名目で100万
ドルを反チャベス派に投入。ベネズエラ国内で労働運動を組織し、
国内世論がチャベス大統領に対抗しているとの構図に見せかけ、ベ
ネズエラ国内でさまざまな工作を行ってきている。

現在、ベネズエラは無料の国民医療サービスを提供する。世界で問
題を起こしている「民営化」にも背を向ける政策を執っている。貧
困対策にも十分な費用を積み立て、新しい学校や住宅の建設も進ん
でいる。

特筆すべきは、「南米のアルジャジーラ」と言える「テレスル」と
いう独自衛星テレビ局を実現したことだ。テレスルにはベネズエラ、
キューバ、ウルグアイ、アルゼンチンが参画し、今も24時間衛星
ニュースを供給している。これまで欧米のメディアに独占されてい
たニュースを自らが発信できるようになったことの意味は大きい。


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