和田通信No.168 2002年1月号   発行 株式会社和田マネイジメント
   
人生、突然の停止があるもの!その対処法は

 2001年は世界の歴史においても重要な年であった。それはもちろん9月11日のニューヨークテロ事件である。ちょうどその日、ハワイにいた私はハワイ島に4日間閉じ込めらた。その時、同じホテルに泊まっていた米国人も最初は何が起こったかわからない状況であった。
 米国近代資本主義を象徴するニューヨークのあのワールドトレードセンターに2機の飛行機が突っ込み、まるで映画のシーンを見ているかのような、あのビルが崩れ落ちていく光景は、大きな衝撃であり、突然、時間が止まったような錯覚を覚えた。
 あの日以来、米国はテロリスト集団とみなしているタリバンを崩壊させるべく軍事攻撃を開始した。しかし、新しい年を迎えた今も首謀者と見られているオサマビン・ラディンを捕らえることはできていない。
 そして一方で、世界の世論は「なぜ、NYテロ事件は起こったのか?」という、もう一つのテーマを投げかけ始めている。冷戦構造が崩れてから、世界は米国中心に動き始めている。一部の識者から出ている「京都会議で決められた環境対応への問題も米国は“NO”と言っている。パレスチナ問題、ミサイル問題等々、米国の勝手な方策ではないか?」というのがその言い分である。
 そして米国はその政治力や軍事力のみならず、企業によって米国スタンダードを世界中に押しつけていることや、映画やメディア、そしてスポーツ、あるいはファーストフードやコーラなどの飲食物までも世界標準にしてしまう戦略をとっていることに対する“世界の危惧”が顕在化し始めている、という見方もできる。
 とりわけ、イスラム教を信じる国々の人達の価値観は生活、文化、教育などまさしく強い信仰心をバックボーンとしているだけあって“かたくな”なところも否定できない。これらの意識が「反米主義」「アンチ米国型資本主義」として今、にわかに動き始めたといっても良いだろう。
 特に21世紀の重要問題として、環境問題は取り上げられているが、実はさらに深刻なのが、“貧困問題”であるといわれている。
 今、1日1ドル以下(これを貧困と言う)の生活をしている人が地球上に5億人はいるといわれている。2010年には15億人になると言われているし、これらの人の生活は米国企業の大株主1人の資産で“餓え”を補うことができるほどの貧富の差がはっきりしているのである。
 今の日本人に“不安”を抱えている人はいても“貧しい”と思っている人がどれだけいるのだろうか?デフレとか不良債権処理とか言いつつも、世の中には物が有り余っているのが実状である。
 21世紀は始まったばかりであるが、NYテロ事件は「豊かさと貧困を抱える矛盾」「強者と弱者を抱える矛盾」をつきつけた事件であると考えた方が良いだろう。
 それは国境の垣根が無くなりつつあり、情報だけは“地球人”になりつつある私達にとって常に考えていかなければならないことである。ハワイ島にいたとき、全ての時間が丸2.5日は止まってしまった。特に「移動」ということを日常化している現代人にとって実にショッキングな出来事であった。ましてやテロ事件に遭遇した人、その家族、あるいは事故現場にある会社や住んでいる人達等々、まるでこのテロ事件は池の中に石を放り投げた波紋が中心から広がるように多くの人達に人生には突然の停止があるもの!ということを改めて知らしめたのである。
 日本人にとって第二次大戦は決定的な人生の突然の停止であった。それから見事に復活し、五十余年がたつ。既に人口の80%ほどの人達は“戦争を知らない”のである。だが、一部の人達は貧困の体験をした人達であるが、明日への希望と豊かさを求めて走り続けてきたものの、個人的、家族的なレベルの問題は別 として、日本人そのものは経済的には「突然の停止」は未体験であった。
 しかし、ここに来て「会社倒産」「リストラ」「自殺の急増」と人生の突然の中断を意味する出来事が私達に襲いかかってきている。このような今まで経験していないようなことが周囲で発生しているにもかかわらず、今の大半の日本人にとって、私も含めてだが、危機感や向上心はどの程度のものなのであろうか?また、日本人は日本人らしく先祖、先輩達が営々と築き上げてきた日本人のスタンダード(価値観を含めて)をどう守り、それをどのように伝承していかなければならないのだろうか?
 グローバル化と同時にドメスティックが大事であり、更に“コミュニティー”が一層大事な時代になるというのに!
 人間は経済的にある程度豊かさを感じていれば、そしてそのような体験をしてくれば実に弱いものであると思う。今は不良債権問題にしても日本経済の状態は砂上の楼閣に近い話しではあるが、大半の人は本当には困っていないのである。
 一昔前に“日本人の平和ボケ”ということで揶揄されたことがあるが、まさしく今は“豊かさボケ”と“救済ボケ”が蔓延している。
 1950年代、60年代はどん底の中からトヨタやホンダ、そしてソニーなどが這い上がってきた。そして新しい国家、産業づくりのために一丸となって経済国家をつくり、そのような中から「日本的経営」という誰でも共有化できた“ビジネスモデル”を築き上げたのである。
 今、私達はこの50年代、60年代に最も学ぶべき点が多いと思う。社会や人生に“停止”をつくってはいけないのである。(時には立ち止まることも必要ではあるが)
 そして、どんな状態になろうとも、最も大切なのは「価値観」である。一人ひとりが揺るぎなき正しい価値観をもって、国家や地域や自分の周囲の人達の幸福を願い、高い志をもってそれぞれの役割を担うことが最も大事なことだと思う。
 そして、どんな事が起ころうともそれを乗り越えられる“強い精神力”だけは身につけておきたいものである。

 

1.百貨店から消える美術館!
 百貨店は“文化”も売る!という考え方が1980年代に主流になった。そしてほとんどの百貨店が美術館を創設した。それがバブル期に頂点に達したが、その後はご承知の通 りである。東武百貨店、千葉そごう美術館、小田急美術館が活動を終え、伊勢丹美術館も2002年3月に閉館するという。百貨店もその存在のあり方が変わってきている。

2.東芝、汎用D-RAM撤退!
 東芝は2002年7月をメドにパソコン向けなどの汎用D-RAM事業から撤退すると発表した。IT不況に伴う構造改革の一環で、撤退に伴う特別 損失役400億円を計上する。汎用D-RAMは韓国メーカーなどにシェアを奪われ、富士通 はすでに撤退しているほか、NECと日立製作所も合弁会社に生産を移す方針を打ち出しており、東芝の撤退によって主要メーカーは撤退や再編を終えることになった。

3.米国で話題の「ファーストカジュアル」というコンセプトのレストラン
 今、米国でもファーストフードからもう少し、サービスを付加して、おいしい食べ物を食べたいというニーズが高まっている。マクドナルドは「ボストン・マーケット」を買収した。ファーストカジュアルはカウンターで注文すると席まで運んでくれる。オーダーして8分ほどでできる。焼きたてパンとサラダとスープを食べさせる「プレスタ・ブレッド」は既に300店以上を展開している。

4.11月の失業率5.5%に上昇!
 完全失業率が5.5%、370万人になった。そして既に6%、600マン人も間近と見られている。倒産も急増して、12月までに「2万件」になると予想されている。最も恐れられているのは、失業予備軍が500万人位 いると予想されていることである。そうなると最悪の場合は1,000万人位 になるということである。

5.東京証券取引所、1年で23%下落、70兆円消滅!
 2001年の東京株式市場は1年で約23%も値を下げた。また、東証一部の市場規模の時価総額で約70兆円が失われた。なかでも多額の有利子負債を抱えるゼネコンや流通 、不動産などは軒並み売られ、100円割れ銘柄が続出し、200社を超す事態になった。2002年は今の状況だと8000円まで下がるだろうというのがもう一つの見方である。

6.出生数最低、117万5千人(2001年生まれ)!
 新世紀スタートの2001年出生は前半の119万547人から約1万6千人減少で過去最低となる。今後当分、出生数は低下していく予想であり、人口減少は続きそうである。  また、結婚は80万3千件と前年から5千件増えて、77年以来80万件を突破、一方、離婚は28万9千件で前年より2万5千件増え、過去最高の伸びとなる見通 し。1分49秒に1組別れている計算となり、初めて2分を切った。

7.プロ野球選手の年俸!
 世の中賃金格差が開く時代である。プロ野球選手のトップクラスは世の中と反比例して右肩上がりである。巨人の松井は史上最高の6億1千万円で単年契約し、西武の松阪は史上最速で1億4千万円になった。そして大活躍したメジャーリーガー、イチローは10億円を超えるだろうし、トップのレジャースのロドリゲスは年俸26億円である。  ニューヨークヤンキースの球団総年俸は100億円になるという。巨人は約41億円である。優勝したヤクルトは12球団中6位 の約19億円、近鉄は12球団中、10位の約16億円である。日本プロ野球選手では1億円を超える選手は63人、また3,000万円以下の選手は全体の68.7%に当たる504人だそうである。

8.スキー場は経営危機に!
 スキー人口はバブル経済崩壊とともに減り続けている。スノーボードが普及したとは言え、需要構造は一変してしまった。全国に約600ヶ所のスキー場があるが、その95%が経営危機にあるという。2000年のリフト収入は1020億円でピーク時より32%減少しているという。  スキー場を中心として専門店チェーンも淘汰されている。スキー場は運営ソフトを含めて本格的に“経営”を導入しないと再建は難しい時代に入った。

9.新通 貨、ユーロ、2002年1月1日スタート!
 欧州通貨統合制度に参加するユーロ圏12カ国で欧州単一通貨ユーロの紙幣、硬貨の流通 が始まった。独マルク、仏フランなどの各国の旧通貨は約2ヶ月間で市場から姿を消し、人口約3億人、発行75兆円、域内総生産(GDP)で、米国に匹敵する規模のユーロ経済圏が誕生した。